2003年8月22日に日本庭園でのホタルの養殖を正式に許可する旨、財団法人こうべ市民福祉振興協会より連絡を頂いたので、下記の通り活動を行ってきました。 活動明細 |
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4−1 日本庭園 見取り図
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4−2 しあわせの村にホタルは飛んだ! 2003年の秋10月、柿も実る頃、私達はホタルのエサであるカワニナを日本庭園小池の両脇に流れ出しているせせらぎの水路に放流し始めました。 最初は300匹、そして10月中に合計900匹を、また12月に500匹、更に2月10日には1200匹と放流を重ね、その数合計2600匹を放流したのです。
冬の間中、カワニナは外敵に食われる様子も無く元気に育っている様でした。 このせせらぎ水路の水は下の大池に流れ下ってから、ポンプで汲み上げられて、上の滝の水源となり、小池に流れ落ちて、再びせせらぎ水路に流れてくる循環水なのです。ポンプの前に濾過装置があり、浸透や蒸発で減った分を水道水で補給するシステムになっています。 この循環システムの各部点検のため、3月中頃、合計4日にわたって水流が停止されました。そのとき水路は渇水状態になっていました。 水路の生き物にとっては、このときが危機でした。幸いその後の観察でカワニナは沢山生きていることが確認出来て一安心したのですが、カワニナの死骸の殻もたくさん見つかり、なにか外敵がいるのかもしれないという不安も感じました。 桜の花も開き始める3月29日、私達は400匹のゲンジボタルの終齢幼虫を、せせらぎ水路に放流しました。 これは神戸から程近い社町のホタル研究家から譲り受けたもので、これらが無事成虫になって飛んでくれることを祈りながら、小池の左側の流れに200匹、そして右側のせせらぎ水路に200匹と二つに分けて放流したのです。
4月19日の夜8時、上陸する様子が見られるかと、期待しながら観察に行きました。 雨上がり、あづまやの下の草むらに三つ、茶店横の流れの上の木の根元に一つと、かすかに光るものを見付けました。近づくと光が消えて見えなくなりました。 4月20日の午後、私達の中の一人が昨夜の場所を見に行ったところ、なんと除草作業が行われていました。刈った草を入れたゴミ袋を開けてもらったところ、上陸したホタルの幼虫が20匹余り出てきました。早速それは拾われて、流れに返されました。 この事件で20匹余りの上陸幼虫が救われたことに安堵し、幼虫の上陸が確認されたのでした。 これで幼虫達が土に潜って蛹になって、羽化してくるのを待つばかりになってきたのです。40日で羽化すると言われているので、それを待つことにしました。 あずまや下のせせらぎ水路の脇には、菖蒲が植えられています。これが成長してやがて6月ホタルが飛ぶころには、花が咲くのでしょう。 しかしこの日本庭園は、夕方7時に門が閉められて、夜は一般の人は入れません、夜間は警備保障会社の管理となり、特別に許可をもらって観察に入ることになりました。 5月20日、激しい風雨が止んできた夜8時頃、ホタルの羽化の兆候が見えるかもしれないと期待しながら、二人のメンバーが小池のあたりを見に行きましたが、ホタルらしいものは何も見付けることは、出来ませんでした。 「遂に飛んだ」! それから3日後の5月23日、菖蒲の蕾も少し膨らんできています。再び雨上がりの夜8時、同じく二人が見に行くと、いました!いました。!菖蒲の上にホタルが飛んでいます。 そしてまたその奥の桜の下、ツツジの上にも4〜5匹飛んでいるではありませんか。 小池の向こう側、茶店の方の流れのあたりにも3〜4匹飛んでいるのを確認しました。 しかしこの庭園の夜間照明は光が強く、数も多いので、オスとメスとが交わす光の信号がかき消される様で、ホタルがかわいそうに思えました。 ライトを消してもらう様に事務所に申し入れましたが、聞き入れてもらえなかったので、私達で黒いビニール袋を庭園灯にかぶせるように準備しました。 翌5月24日と25日はシロアリ駆除と樹木の薬剤散布のため日本庭園は閉園になりました。殺虫剤などでホタルが死なないように祈るばかりです。 そしてその翌日、5月26日の夜8時の約束時間を待ちかねて7時40分、メンバー全員で見に行きました。ホタル達は元気に飛んでいるでしょうか。 警備保障会社の人に正門の鍵を開けてもらって、竹林の中の石畳を歩くのももどかしく、上の小池の方へと急ぎました。 あづまやを見上げるせせらぎ水路にたどり着くと、います、います、たくさんのホタルが菖蒲の向こう、桜の木の下、ツツジの上、笹の茂みの上へと飛び交っているのが見えました。よかったよかった。そして早速用意してきた黒いビニール袋を二重にして、近辺の七つの庭園灯にかぶせました。 するとあたりは夜の風情か一段と深まり、ホタルの交わす明滅信号がくっきりと浮かび上がって、一層元気よく飛び交います。 この日は36匹の飛翔を確認しました。 9時になったので、観察を終了し、ビニール袋を外すと、また大変明るくなりましたが、ホタルたちもこれから休息に入るから、まあよいだろうと思いながら、庭園を後にしました。 また翌日の27日、写真撮影などの準備をして観察に行きました。「ホタルの光で本が読めるか。」も確かめたいものです。 ペットボトルに通気用の小穴をたくさん開けて、文字原稿の前に吊しました。 捕虫網でホタルを捕まえて、5〜6匹入れてみました。明滅する光が明るくなった一瞬は、大きな文字は読めます。
長時間小さな文字を読むには、数百匹のホタルを網の袋に入れて、その明かりで読むと読めるのではなかろうか、と想像しました。そう書いてある文献もあるようです。 この日のホタルの数は24匹を数えました。
これらのホタルがうまく産卵して、来年もここでまた飛んでくれるように、見守っていきたいと思っています。 |
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4−3 経過 「しあわせの村にホタルを飛ばそう!」を目標に、ホタルの生息環境に適合していると思われる、日本庭園のせせらぎ水路を学習の拠点として選びました。 そこでの飼育活動を1年以上に亘り年月を追って記述してみました。 2003年 午前10時10分 気温28℃ 水温28℃ 湿度70%、水質調査=COD、アンモニウム、亜硝酸、硝酸、りん酸、塩素の検査をする。 結果、水温の高いのに危惧、その他問題なし。(cf.別表 日本庭園の水質調査)、水生生物調査結果=ヌマエビ、カワニナ、ヒル、アメンボ、ヘビトンボの幼虫、アメリカザリガニの子供など生存確認。 |
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4−4 日本庭園に於けるホタルの生息環境 (適合している項目) (イ) 水質、水道水を循環しているが循環水路が長く且つ庭園の池も広いので塩素の影響は心配ない水路や池にはヘビトンボの幼虫やヌマエビ、アメンボ、メダカ等の昆虫や小生物が沢山生息しています。 (ロ) 水量、ポンプによる循環が行なわれており、水量は極めて安定している大雨でも鉄砲水や泥水の心配はない。 (ハ) 水路、ポンプで汲み上げた水は、二本の水路をつたって池に流れ込んでいます。 西側(茶室前)水路には少し泥の堆積が見られるが、東側(あづまや下)の水路は砂利でホタルの生息条件としては良い。また、水路の水深も約5cm程度で良好。 (ニ) 水路の流速、秒速20〜30p 良好。 (ホ) 水温、夏は池で温まった水を循環させるので、周辺の河川の水温よりかなり高くなっています。 (最高28℃程度となる)冬は凍結した状態でもホタルの幼虫は生息可能といわれているが日本庭園では最低でも3〜5℃程度です。 (へ) 溶存酸素量、ゲンジボタルの幼虫は水中の酸素を鰓器官から取り入れて生活しているので、水中に溶けている酸素量の多少が生存する上で大きな影響をうける。水温が高くなればなるほど、溶存酸素量は減少するので摂氏25度を越えると生息しにくい環境となる、水深が浅ければ水面から酸素が溶け込むし、滝や落ち込みがあるので溶存酸素量を飽和状態に保つことが出来るので生息が可能と推測されます。 (ト) 周辺の環境、草刈や枝払い等が適宜されているので日照や空間が確保されて飛翔空間が提供されている水路に沿って、一方が林となっており、又他方は芝生が広がり、土壌も柔らかくホタルの生息に適しています。 |
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4−5 日本庭園の水質調査 1) 調査日 平成16年7月7日(水) AM10.10 天候 晴れたれ曇ったり気温 28℃ 湿度 70% 水温 28℃ 調査項目 (1) COD(化学的酸素消費量) 発色試薬 過マンガン酸カリュム 調査結果 判定 測定範囲 0〜8mg/L 四阿下の水路 (1)6mg/L △ 結果評価の目安 0〜5mg/L 茶室前の水路 (2)4mg/L ○ 反応時間 4〜6分 (2) アンモニュム(NH4)インドフェノール青比色法 発色試薬 塩素化剤 サリチル酸塩 調査結果 測定範囲 0.2〜10mg/L (1)0.2mg/L○ 結果評価の目安 0.2mg/L(未満はきれい) (2)0.2mg/L○ 反応時間 5分 0.5mg/L(以上は少し多い) (3) 亜硝酸(NO2) ナフチルエチレンジアミン比色法 発色試薬 ナフチルエチレンジアミン 調査結果 測定範囲 0.02〜1mg/L (1)0.02mg/L○ 結果評価の目安 0mg/L(はきれい) (2)0.02mg/L○ 反応時間 3分 通常は0.05mg/L以下 (4) 硝酸(NO3)還元とナフチルエチレンジアミン比色法 発色試薬 ナフチルエチレンジアミン 調査結果 測定範囲 1〜45mg/L (1)0.2mg/L○ 結果評価の目安 5mg/L(未満は少ない) (2)0.2mg/L○ 反応時間 3分 通常は5〜10mg/L前後 (5) りん酸(PO4)酵素法 発色試薬 酵素4 アミノアンチピリン 調査結果 測定範囲 0.05〜2mg/L (1)0.1mg/L ○ 結果評価の目安 0.1mg/L(未満はきれい) (2)0.05mg/L○ 反応時間 3分 0.1〜0.5mg/L(少し多い) (6) 塩素チェッカー 10秒間水に浸すだけの短時間測定 調査結果 (1)〜(2)共反応なし○ (7) P H 測定器により測定 調査結果 測定日 04/7/19 (1) 8.7 ○ (2) 8.5 ○ 2) 調査日 平成16年10月14日(水) PM12:30 天候 快晴 気温 21℃ 湿度 − 水温 22℃ 調査項目 上記1)と変化した項目のみ記載 (1) COD(化学的酸素消費量) 四阿下の水路 (1)6mg/L △ : 茶室前の水路 (2)4mg/L ○ (5) りん酸(PO4)酵素法 (1)0.1mg/L ○ : (2)0.05mg/L ○ |
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4−6 日本庭園におけるホタルの生息環境 (適合しにくい項目) (イ)一年に一度、水を循環させるポンプの保守点検を行なうために 約4日間水路の水が止められる(時期は毎年3月頃)。この間水路には殆ど水はなくなるが、放流しているカワニナは耐えられることを確認した。しかし、水のない水路に野鳥が飛来して餌として食べたのかカワニナの殻が散見された。問題は水のない水路でホタルの幼虫がどのような影響を受けるかはまだ 確認できていない。今年(平成16年3月)の幼虫の放流は 保守点検が完了したのを確認しておこなった。 (ロ)日本庭園内の樹木の害虫駆除を行なうために 4月〜5月頃薬剤散布が行なわれる。丁度この時期にホタルの幼虫が蛹になるために、岸辺に上陸する時期と合致するため場所によっては被害を受ける可能性がある。 (ハ)水路の落ち葉や雑草は徹底して除去され園内の美観に力が注がれているのでカワニナの餌が不足し繁殖が抑えられる。 (ニ)園内の照明が多くホタルの飛翔に影響している。今年はホタルの観賞日だけ、水路周辺の照明のみ明るさを半分程度に制限した。管理側としてはホテルの宿泊客やホテルのレストランからの景観上大幅な制限は出来ないとの意向。 (ホ)5月中はホタルの幼虫は蛹になって水路周辺の土の中にいるが、多くの作業員が除草や剪定作業で水路周辺の土を踏むことになり、蛹が土中で潰される可能性が高い。 対策 日本庭園は美観と安全性を中心に管理されているので、ホタルの生息環境とは相反するところがあります。ゲンジボタルが水中で生活する約8ヶ月は、比較的に問題がすくない。ホタルは、4月中旬頃水中から出て地下にもぐり蛹となる約50日で成虫となって飛翔し、産卵する。約1ヶ月後、ふ化し幼虫となって再び水中に戻る。水中から出ている4月〜7月の4ヶ月に問題が多いこと。また、ホタルの生息地は公園のなかでも限定的な場所であること等から公園管理課との話合いで解決できるものと考えています。 |
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4−7 生息地保全と飼育 増殖の問題点 (イ)最近の研究によって西日本と東日本とで、全く発光周期が異なることが明らかにされました(ゲンジボタル)。 西日本ではオスが一斉に周期を合わせて発光しています。約2秒に1回、東日本では約4秒に1回発光し、その分布境界域は、ほぼ静岡県−長野県-新潟県を結ぶ地帯となっています。 このように同種のホタルであっても、地域ごとに発光パターンや生態が異なる、ほか遺伝子も固有であることが明らかになっています。従って他地域から安易にカワニナやホタルを移動させる事は、地域に固有なホタルやカワニナの集団の保全を損なうことにつながってしまう。 (ロ)生息地の自然的背景や容量を無視したホタルの増殖は、かえって地域特性を損ねホタルの生息環境の永続性という観点からみても望ましくありません。 対策 従って私達も、今後日本庭園にカワニナやホタルの幼虫を放流する場合は、自然の容量をよく検討し、過大とならないよう注意するとともに、しあわせの村から出来れば数km以内で、カワニナやホタルの幼虫を取得するように努力しなければならない。 |